発売直後にアマゾンに注文したのですが、他に未読書が溜まっていて、最近やっと読み終えました。
橘玲独特の少々毒のある文章で楽しく読めました。全体的に橘玲氏の過去の著作をアップデートして一冊にまとめたような内容になっています。個人的に面白かったのは1章、4章、6章でした。以下、章毎に簡単に感想を書いてみようと思います。
第1章 究極の投資VS至高の投資 個人がいかにしてプロのポートフォリオに近づけるか(もしくは勝てるか)について述べられています。結論はサラリーマンの人的資本を債権に例えて、手持ちの資金にレバレッジをかけてリスク資産に投資すべしということのようです。内容的には『臆病者のための株入門』の続編のような感じです。自分の人的資本に対して、それほど多くない金額のアセットアロケーションをこまごまと考えている人にとっては皮肉な内容に感じそうです。経済合理性を突き詰めると安定した収入のあるサラリーマンであればフルレバレッジすべしということになるのかもしれませんが、私には怖くて出来ません(笑。
第2章 誰もがジム・ロジャーズになる日 内容は面白いのですが、新興国への投資には興味がないのでスルーです。
第3章 ミセス・ワタナベの冒険 こちらも内容は面白く、FXや為替の仕組みを理解できるのですが、興味がないので流し読みでした。個人的にFXは胴元の取り分が少ない割のいい博打だと思っています。
第4章 革命としてのヘッジファンド 前半のヘッジファンドの話も面白かったのですが、後半の複雑系の科学と投資を結びつけた部分が『投資の科学』を簡略化したような内容で興味深かったです。私は個別株投資でファットテールの端っこを狙っているつもりなので、著者の意見とは少し違って、市場はそれほど効率的ではないと思っています。ファットテールの「身長10メートルの巨人」という例えは面白いのですが、合理的な個人が合理的な市場を形成しているのではなく、非合理的な個人が相殺しあって結果的に市場が「ある程度」合理的だと仮定すれば、どこかに「身長10メートルの巨人」はいると考えています。
第5章 タックスへイヴンの神話と現実 『マネーロンダリング入門』とほぼ同じような内容でそれをアップデートしたような感じでした。日本でも沖縄かどこかがタックスヘイヴンになれば面白そうなのになぁなんて妄想してしまいました。
第6章 人生設計としての海外投資 この章は今までの橘玲氏の主張を繰り返しているような感じです。海外投資と非居住者になることによる合法的節税について語られていますが、最後はやっぱり主権国家を否定しているのかなぁと思わせるような内容でした。PTという生き方については、家族も持たずに一人で生きていく覚悟があるのなら案外簡単に実現できそうな気もします。ただ、一般の人々にとっては家族や友人、その他のいろいろなしがらみや健康面(特に老後)の問題などを考えるとなかなか実現するのは難しいのではと思います。
過去に橘玲氏の本を読んだことがある方も充分楽しめる内容になっていると思いますし、金融に興味があるのならこの本から始めて、そのほかの橘玲の本を読んでみるのもいいかもしれません。ちなみに、
公式サイトによると、このシリーズは実践編を含めて3部作になるようで、続編の発売が楽しみです。
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こんばんは。遅くなりましたがTBどうも。
私は本書を手始めに彼の著作を何冊か読みましたが(いつか書評を書くかも)、頭がよい上に独特の味があって面白いですよね。続編が出版されるというのはItoさんの記事で初めて知りました。出版されたら、私も購入してみようかな。
橘玲は小説も書いているせいか、他の投資本に比べて読ませ方が上手いように思います。主張がちょっと極端な感じがして、そのまま真似するのはどうかと思う部分もありますが、読み物としてある程度割り切って読めば橘玲の本はどれも面白かったです。空色さんの書評も楽しみにしてますよ~。
続編は私も楽しみです。私は多分買っちゃうでしょうね・・・。
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