角山さんの本、やっと読み終えました。
第一印象は「本がでかくて読みにくいな」でした(笑。本棚に片付けにくいので、単行本サイズであればなぁと思いました。図表が多いので大きいほうが読みやすいのでしょうが。内容は私が今まで読んできた本や勉強してきたことの総復習といった感じでした。内容や引用されている図表が過去に読んだ本で出てきたものが多かった印象があります。しかし、このページ数でこれだけの内容をまとめるのはさすがだなぁと思います。
章を追って自分の決算書や指標、企業価値に関する理解度をはかるにはちょうど良い本だと思います。ということで、内容の振り返ってみましょう。
第一章の「決算の基本」はさすがに問題なし。過去に決算書の読み方に関する本を読んだり、会社で財務に関する研修を受けたお陰でここで引っかかることはありませんでした。第二章の「経営分析」もなんとかクリア。各財務指標は
会社での研修で一通り勉強済でした。問題はそれを投資に生かせているかどうかですが・・・。
第三章の「経営指標」はROEからROICまでは問題なし。EVAについては、『
ビジネスゼミナール 証券分析入門
』を読んだ方なら問題ないと思います。WACC(資本コスト)とROCE(資本利益率)については、過去に
会社でファイナンスの基礎を勉強していたので何とか理解できています。
第四章の「投資指標」については、PER、PBR、EV/EBITDAまですべてOK。角山さんはEV/EBITDAよりEV/EBITを好むようです。わたしもEV/EBIT派。どうもEV/EBITDAは使いにくいと思います。ポール・ソンキンのキャップレートまで紹介されてます。面白かったのはキャップレートやEV/EBITに非常に近いEV/FCF倍率という指標でした。
問題はここから先です。
第五章の「定性分析」。ビジネスモデル分析やファイブフォース分析(これは全然知りませんでした)が紹介されていますが、どうしても私はこれらの分析が主観的に行われているように感じます(偏見でしょうか?)事業を行ったことが無い人間が事業を分析するというのは、どうも私には腑に落ちません。一応読みましたが、この章は今後もあまり参考にしないと思います。下手な定性分析で特定銘柄にバイアスがかかるほうが弊害が大きいと感じます。ただ、この章の最後に出てきた参入障壁と撤退障壁は比較的理解しやすかったです。
第六章「企業価値」といいうことで、簡便な理論株価の算出方法やDCF法が紹介されています。簡便な方法については『
なぜか日本人が知らなかった新しい株の本
』やこの本に書かれている方法で簡単に出せるのでしょうが、本当に株価は企業価値(理論株価)に収斂していくのか検証がほしいところです。DCF法は理論はしっかりしていますが会社の価値がDCF法だけで決まるということがなんとなくしっくりきませんし、DCF法に使われる割引率の設定の問題も引っかかります。定性分析を行うなら数字で計ることのできない企業価値をDCF法にどう組み入れていくのかも考える必要があると思います。
ということで、定性分析とDCF法(理論株価)に対する不信感(というか私が苦手なので嫌いなだけかもしれませんが・・・)を改めて感じてしまいました。KAPPAさん式の定量分析だけで行う手法のほうが、今の私には向いていそうだと改めて感じます。
最後に、この本を予約したときに角山さんから頂いた「マーケットに参加するための8つに心構え」というPDFの小冊子があったのですが、これがなかなか良かったです。数ページの小冊子ですが、私は何回も読み返しています。
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この本読んだんですね。個人投資家の本を買うのは止めたものの、この本だけは気になっていて・・ Itoさんの解説記事のお陰で内容が大体分かりました。ありがとうございました。
第5章の定性分析(特にファイブフォース分析)はたぶん、ポーターの「競争の戦略」がベースだろうと思います。本人の書いたものは大変難解ですが、入門書が出版されています(ちなみに経営学の教科書で、投資の本ではありません)。
定性分析は主観的要素が入ります。なので、定性分析をする人はみんな「投資はアート」と考えていると思います。私なんかはそれが面白いと思いますが、「結局バイアスじゃん」という考え方もあるわけで、人それぞれだと思います。
ただ、定性分析でも数字は使います。cpainvestorさんがシェアーズで開催した先日のセミナーではその辺をやってくれたので大変参考になりました。でも、DVDは発売されないようなので・・
昨年末のシェアーズ・山口さんのセミナーでも有報を使った定性分析の仕方が分かります。3万円と安くありませんが、興味があれば見てみる価値はあります(そのときは私のブログを通って買ってください(^^;))
DCF法については私も最近考えていることがあるので、そのうちブログに書いて見たいと思います。
>空色さん
まいどです。
本の内容は良かったですよ。値段も良心的ですし。本が大きくて書棚に仕舞いにくいことを除けば(笑)買っても損はしない内容だと思います。
ファイブフォース分析については本書でもマイケル・ポーターの理論をベースにしていると書かれていました。私は勉強不足でよく知らないのですが・・・。また、定性分析の章では「投資はアートである」との認識も示されていました。
私個人としては、定性分析のセンスがないと自覚していますので、できる限り自分の主観の入り込む余地の少ない銘柄選択、売買を行うほうが賢明と考えています。
少し前の山口さんのメルマガ「竹田和平さんにお会いしました」の中でバリュー投資のパターンを財務重視(定量的アプローチ)・事業重視(定性的アプローチ)と集中型・分散型のマトリックスで4分類されていましたが、イメージ的には私には財務重視・分散型のグレアム系が一番あっているように思っています。ちなみに事業重視の集中投資はバフェット系です(なのでこのブログタイトルでアンチバフェットなのです)。
cpainvestorさんのセミナーに参加していれば、或いは定性分析アレルギー(笑)から少しは開放されていたかもしれませんが、今は基本的なスタンスは変えないほうが賢明だと思っていますので、恐らく今後も定性分析はあまり重視しないと思います。ここら辺は同じバリュー投資でも人によってかなり意見が違うところなんでしょうね。
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