「takahata_kazuoさんの日記」より「
[株]会社四季報CD-ROMでF_SCOREを計算する」というエントリを当ブログにトラックバックして頂きました。非常に素晴らしいエントリだったので、私が暫定的に使っている条件式を晒して、takahata_kazuoさんの条件式と比較してみようと思います。
ROA
Ito(以下"I") ([連・経常利益(-1)]*0.58)/[連・総資産(-1)]*100
takahata_kazuoさん(以下"t") ([連・当期利益(-1)]-[連・特別利益(-1)]+[連・特別損失(-1)])/[連・総資産(-1)]
私は「特別損益調整前の純利益」に関して、"経常利益 X(1-税率)"と、単純化してしまいましたが、各企業の実効税率や後のアクルーアルの条件式を考えると、takahata_kazuoさんの条件式のほうが正確な数値が出せそうです。
CFO
I [連・営業キャッシュフロー(-1)]/[連・総資産(-1)]*100
t [連・営業キャッシュフロー(-1)]/[連・総資産(-1)]*100
これは同じですね。
⊿ROA
I (([連・経常利益(0)]*0.58)/[連・総資産(-1)]*100)-(([連・経常利益(-1)]*0.58)/[連・総資産(-1)]*100)
t (([連・当期利益(-1)]-[連・特別利益(-1)]+[連・特別損失(-1)] )/[連・総資産(-1)]-([連・当期利益(-2)]-[連・特別利益(-2)]+[連・特別損失(-2)] )/[連・総資産(-2)]))*100
この部分が私が一番迷ったところです。「ROAの改善度」ということで、比較を前期対前々期とするか、今期予想対前期とするか、さんざん迷いました。F_SCOREの他の指標の変化は基本的に前期対前々期なので、この部分もF_SCOREを正確に四季報で再現するとすれば、takahata_kazuoさんの条件式のほうが正確だと言えそうです。ただ、『
行動ファイナンスの実践
』によれば、「ポジティブな利益トレンドの形成は、当該企業がプラスのキャッシュフローを生成できるようになるといった潜在力の改善を示唆するものである。」とありますので、ROAの改善度は最新の状況を見るために今期予想ROAと前期実績ROAで行うべきではないかとも感じています。この場合の条件式の利点は年4回の四季報発売毎に新しい銘柄が出てくる可能性があることであり、欠点は利益予想が四季報の予想に依存することになること、四季報にはB/Sの今期予想値がないので、ROAの分母となる総資産について便宜的に前期の数値を利用することになり、私の条件式では単純に今期と前期の利益額の多寡の比較になってしまうということです。
アクルーアル
I ([連・営業キャッシュフロー(-1)]/[連・総資産(-1)]*100)-(([連・経常利益(-1)]*0.58)/[連・総資産(-1)]*100)
t ([連・当期利益(-1)]-[連・特別利益(-1)]+[連・特別損失(-1)])-[連・営業キャッシュフロー(-1)]
ROAの部分でも述べたとおり、takahata_kazuoさんの条件式のほうがより正確な数値が出せます。
⊿MARGIN
I ([連・営業利益(0)]/[連・売上高(0)]*100)-([連・営業利益(-1)]/[連・売上高(-1)]*100)
t [連・売上高経常利益率(%)(-1)]-[連・売上高経常利益率(%)(-2)]
ここもいろいろ迷いました。⊿ROAと同じように、今期予想と前期実績の比較とするか、前期と前々期実績との比較にするか迷っています。また、「売上高総利益率」とあるので、粗利率の改善度を見るものかと思っていたのですが、『行動ファイナンスの実践』には「売上高総利益率の改善は、販管費の改善~・・・」とありますので、最終的に営業利益率の今期予想対前期実績の比較としました。しかし、S_SCOREを正確に条件式化するとすれば、takahata_kazuoさんの条件式のほうがより正確です。
⊿TURN
I [連・総資産回転率(回)(-1)]-[連・総資産回転率(回)(-2)]
t [連・総資産回転率(回)(-1)]-[連・総資産回転率(回)(-2)]
これは同じですね。これ以外に条件式の作りようがないです。
⊿LEVER
I [連・有利子負債依存度(%)(-1)]-[連・有利子負債依存度(%)(-2)]
t [連・固定負債(-1)]/(([連・総資産(-1)]+[連・総資産(-2)])/2)*100-[連・固定負債(-2)]/(([連・総資産(-2)]+[連・総資産(-3)])/2)*100
四季報CD-ROMのHELPによれば、「有利子負債依存度の算式は、期首期末平均の有利子負債÷期首期末平均総資産×100(%)」となっていますので、考えるのがめんどくさくなってきてこのような条件式にしてしまいました。”有利子負債”には短期借入金も含まれてしまいますし、”固定負債”には社債・借入金のほかに繰延税金負債や引当金などが入ってきます。一長一短でしょうか・・・。あるいは、takahata_kazuoさんの条件式の[連・固定負債(-1)]を([連・社債(-1)]+[連・長期借入金(-1)])と置き換えてもいいかもしれません。
⊿LIQUID
I [連・流動比率(%)(-2)]-[連・流動比率(%)(-1)]
t [連・流動比率(%)(-2)]-[連・流動比率(%)(-1)]
これも同じ、これ以外にないでしょうね。
公募増資
I "No idea"
t [連・資本金(-1)]-[連・資本金(-2)]
これはまったく思い浮かびませんでした。資本金の増減というのは名案だと思います。
全般的に見てtakahata_kazuoさんの条件式の方が正確であると思います。そもそもピオトロスキの研究ではすべての指標を前期・前々期実績比較で計算を行っているのでtakahata_kazuoさんの条件式は完璧かと思います。
takahata_kazuoさんのトラックバックに感謝です!
9/19追記:takahata_kazuoさんのブログで、F_SCORE条件式の訂正が行われております。より正確な条件式となっております。ご参考まで。http://d.hatena.ne.jp/takahata_kazuo/20060916/1158420875
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こんにちは。高畑です。お役に立てたようで幸いです。
Itoさん作成の条件式の開示、ありがとうございます。
予想値か実績値かの話ですが、仰るように、ピオトロスキのF_SCOREに従うならば私のように実績を使うことになるでしょう。けれども、Itoさんのように予想値を使う方が効果的かもしれませんね。というのも、KAPPAさんの本(図表3-3他)によれば、将来予想を使う方がリターンが良いからです。予想値を使うと、オリジナルのF_SCOREを超えられるかもしれません。
ところで、ItoさんはF_SCOREについてKAPPAさんの本より詳しくご存知のようですが、どの本を読むとF_SCOREについてよく分かるでしょうか?
>高畑さん
こんばんは。こちらこそありがとうございました。
F_SCOREの件ですが、私が知っているのは『行動ファイナンスの実践』(P.105-109)とグリーンブラッドの『株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」』(P.211-212)のJ.Piotroskiに関する記述の範囲です。
Piotroskiの論文の原文を探してみました。
http://webuser.bus.umich.edu/Lundholm/mywebs/valuedog/Piotroski_Value%20Investing.pdf⊿ROAについてはcurrent year's ROAとprior year's ROAの比較と書かれています。これが、今期と前期なのか、前期と前々期なのか、英語が苦手な私には判断できません・・・。
原文が公開されているとは知りませんでした。紹介ありがとうございます。
"current year"と"prior year"を和訳すればそれぞれ"当年"と"前年"になります。ただ、四季報などで現在進行中の会計年度を"今期"と呼ぶのとは違い、論文では直近の決算で報告対象としている会計年度を"current year"と呼んでいます。日本語でも06年5月頃に06年3月期を指して"当期の業績は…でした"と報告しますが、それと同じです。
43頁(PDFの表示では44頁)下にある"Variable Definitions"での説明が分かりやすいと思います。
その"Variable Definitions"を読んでいたら、条件式に訂正すべき点が多々見付かったので、今夜書き換えておきます。
>高畑さん
current yearとprior yearについてはよくわかりました。ありがとうございます。ちなみに、原文43pの解説を見てみましたが、やっぱり意味がわからない部分が多かったです・・・。
高畑さんのエントリの訂正・加筆分も参照しました。ROA、CFOの分母は当該期の前期末の数値を使うんですね。これで結果が多少変わってきそうな気がします。
これでF_SCOREの条件式はほとんど完成ですね。高畑さんのお陰です。ありがとうございます!
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